企業において、災害への備えというと、従業員の安否確認や避難場所、非常用品などを思い浮かべることが多いかもしれません。しかし、普段から社用車を使用している企業では、「災害時にクルマをどうするか」も考えておきたいポイントです。
特に注意したいのが、豪雨による道路の冠水です。
「このくらいの水なら走れるだろう」「水が引いたからエンジンをかけても大丈夫だろう」といった判断が、車両の重大な故障や事故につながることも。
今回のコラムでは、そんなNG項目をわかりやすく紹介。クルマが冠水した場合の対応を中心に、地震発生時の注意点や保険、平常時から備えておきたい車両管理のポイントをご紹介します。

豪雨のアンダーパスで水没したクルマ
これだけはNG!その1. 冠水している道路への侵入

冠水している道路
豪雨の際、「クルマはどのくらいの水深までなら走れるのか」と考える方もいるでしょう。
しかし、冠水した道路では正確な水深を判断することが難しく、水面の下に段差や側溝などが隠れている可能性もあります。また、同じ水深でも、車種や走行速度によって影響は異なります。
そのため、「○○cmまでなら大丈夫」と自己判断せず、冠水している道路には進入しないことが基本です。
もし無理に進入すれば、マフラーやエンジンの吸気系から水が入り、エンジンが全損(特別修理・廃車)となるおそれがあります。さらに水位が上がれば、車体が浮いてコントロールできなくなったり、車内に閉じ込められたりする危険もあります。
ハイブリッド車やEV(電気自動車)も、例外ではありません。ハイブリッド車はエンジンへの浸水、EVでは駆動用バッテリーや電気系統への影響によって、走行不能になるおそれがあります。パワートレーンの種類にかかわらず、冠水路への進入は避けましょう。
これだけはNG!その2. 増水した河川やアンダーパス付近の通行・駐車
特に高架下や立体交差などのアンダーパスは、周囲より地面が低いために、短時間で水位が上がりがちです。普段利用している道路でも、冠水していたら無理に進まず迂回しましょう。水位が上がれば、車体が浮いてコントロール不能になる、車内に閉じ込められるなどの危険性もあります。水深が一気に深くなれば、車両ごと流される危険性もあります。

河川の氾濫
これだけはNG!その3. 冠水した車両のエンジン始動
冠水路を走ったなど、浸水した可能性のある車両では、水が引いた後の対応にも注意が必要です。
目立った損傷がなくても、車両内部に水が入った状態でエンジンを始動すると、エンジン内部の損傷や電気系統のショートなどにつながる可能性があります。以下に要確認事項を見ていきましょう。
これだけは要確認!その1. 浸水跡(水線)などの確認
まずは車外からの確認事項です。タイヤの半分(ホイールの中心)を超えて水に浸かった跡がないかをチェックします。この際、タイヤの中央以上まで浸水した跡がある場合には、絶対にエンジンをかけず、レッカー移動を手配してください。

また、マフラーの排気口やエンジンルーム内に泥、草、ゴミが詰まっていれば同様の危険性があるため、これらも確認します。
これだけは要確認!その2. 車内やエンジン音などの確認
以下は車内からの確認事項です。車内に水の侵入跡や、泥の臭いがないかを確認します。足元が濡れている場合、電装系に水が回っている可能性があります。
次いで警告灯の確認です。メーターパネル内に「エンジン」「ブレーキ」「ABS」「バッテリー」などの警告灯が点滅・点灯していないか確認します。
もしすべて問題なく思える状態でも、アイドリング時に「キュルキュル」「ガラガラ」といった異音や、通常と異なる振動がないかどうかを確認しましょう。
もし水害・冠水被害に遭ってしまったら…

安全に走行できるか判断できない場合や、車両の移動・レッカー移動が必要な場合には、自動車保険に付帯するロードサービスやJAFなどに相談し、必要に応じて搬送・点検を依頼してください。
リース車両では、契約内容によってロードサービスが付帯している場合もあります。メンテナンスカードや契約内容、緊急時の連絡先を平常時に確認しておくと安心です。
地震が発生後、すべきことの優先順位

社用車の災害対策で注意したいのは、豪雨だけではありません。地震の場合は、また異なった対応が必要になります。
運転中に大きな地震が発生した場合には、まずは、従業員自身の安全確保を最優先にします。揺れが収まった後も、余震や建物の倒壊、道路の損傷などに注意し、周囲の安全を確認してから、車両の状態の確認を始めましょう。
落下物によるボディやガラスの損傷、道路上の割れたガラスやがれきなどによるタイヤの損傷、パンクがないかを確認します。安全に走行できるか判断できない場合には無理に運転を続けず、自動車保険(任意保険)の窓口やロードサービス、リース会社などに相談してください。
地震・津波・噴火による車両被害は、保険の対象外となる場合も
企業としてあらかじめ確認しておきたいのが、自動車保険の補償内容です。
一般的な自動車保険の車両保険では、地震・噴火・津波による車両損害が補償対象外となっている場合があります。一方、契約内容によっては、地震・噴火・津波によって車両が全損した際に一定額を受け取れる特約などが用意されている場合もあります。
「車両保険に加入しているから、災害時もすべて補償される」と考えず、自社の契約内容を確認しておきましょう。
水害・地震等、災害時の道路確認に、トヨタの「通れた道マップ」
災害時には、道路そのものが通行できるかを確認することも重要です。
トヨタでは、災害発生時の安全な走行のための参考情報として「通れた道マップ」を公開しています。トヨタのテレマティクスサービスを利用する車両から収集した情報をもとに、直近24時間以内に実際にクルマが通行した道路を地図上で確認できるサービスです。

ただし「通れた道」と表示されていても、いま現在も安全に通行できる状態とは限りません。警察や道路管理者などが発信する最新情報とあわせて確認しましょう。
社用車の災害対策は、平常時の車両管理から
災害そのものを防ぐことはできませんが、平常時の備えによって、災害発生時の混乱や車両への被害を減らすことはできます。
たとえば、豪雨時にはどの段階で社用車の運行を中止するのか。冠水しやすい道路はどこか。災害時にはだれへ連絡するのか。こうした基本的なルールを決め、社内で共有しておけば、いざというときにも判断しやすくなります。
また、複数の社用車を保有する企業では、車両ごとの保険やメンテナンス、ロードサービス、緊急時の連絡先などを把握できる状態にしておくことも重要です。
社用車は「業務インフラ」のひとつ。災害への備えも、日頃の車両管理の一部として考えておきたいところです。
いかがでしたでしょうか。
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